マイクロ法人で社会保険料が変わる仕組み|国保・国民年金との違いを2026年度の料率で整理

結論:マイクロ法人で社会保険料が「変わる」のは、保険料の決まり方そのものが変わるからです。ただし、必ず減るわけではありません。

個人事業主は、前年の所得に応じた国民健康保険料と、定額の国民年金保険料を払います。法人の役員は、毎月の役員報酬から決まる標準報酬月額に料率を掛けて、法人と本人で折半します。法人側の負担や、将来の年金・病気のときの給付も変わるため、損得は個別に違います。判断は社会保険労務士または税理士に確認してください。

「マイクロ法人にすると社会保険料が変わる」とよく言われますが、なぜ変わるのかを制度から説明した情報は多くありません。この記事では、日本年金機構・協会けんぽ・厚生労働省の公式資料をもとに、保険料が決まる仕組みを2026年度の料率で整理します。運営者は社会保険労務士でも税理士でもないため、あなたの法人にとっての損得や、役員報酬をいくらにするかの助言はしません。

個人事業主の保険料は「所得」と「定額」で決まる

個人事業主は、医療は国民健康保険、年金は国民年金に入るのが基本です。

国民健康保険は、市区町村ごとに保険料が違います。厚生労働省の資料では、所得割・均等割・平等割などを組み合わせて計算し、率や金額は条例で決まるとされています。世帯に属する被保険者の分を合計した額に、条例で定める限度額が設けられています。つまり、前年の所得が増えれば保険料も増え、被保険者の人数が増えれば均等割も増える仕組みです。

国民年金は、所得に関係なく定額です。2026年度は月額1万7,920円です(日本年金機構)。

法人の役員は「役員報酬」で決まる

株式会社などの法人は、事業主だけの場合でも厚生年金保険の適用事業所になります(日本年金機構)。このため、法人を作ると、法人の役員は健康保険・厚生年金保険の対象になるのが原則です。

厚生労働省の2026年3月の通知でも、法人の役員は「労務の対償として報酬を受けている者」が被保険者になるとされています。判断の基準は、役員としての業務が経営に参画する経常的な労務の提供であること、報酬が業務の対価として継続的に支払われていることの2点です。

保険料は、毎月の報酬をいくつかの区分(等級)に当てはめた「標準報酬月額」に料率を掛けて決まります。ここで押さえたいのは、保険料の基準が法人の利益ではなく、役員に支払う報酬だという点です。役員報酬は、法人税の計算で経費(損金)にするには、原則として毎月同額で払う必要があり(定期同額給与)、事業年度の途中で自由には変えられません(国税庁 タックスアンサー No.5211)。

2026年度の料率と、一般的な金額の例

協会けんぽ東京支部の2026年度の料率は、健康保険料率9.85%(2026年3月分から)と、子ども・子育て支援金率0.23%(2026年4月分から)です。厚生年金保険料率は全国共通の18.3%です。40歳から64歳の方には、介護保険料率1.62%が加わります。健康保険料率は都道府県ごとに違い、健康保険組合に入る場合も別です。

下の表は、東京支部の保険料額表から、標準報酬月額が8万8,000円・20万円・30万円の場合を抜き出した一般例です。40歳未満・介護保険なし・賞与なしで、月額です。仕組みを見るための例で、おすすめの金額ではありません。

標準報酬月額 健康保険(本人分) 子ども・子育て支援金(本人分) 厚生年金(本人分) 本人負担の合計 法人と本人の合計
8万8,000円 4,334円 101円 8,052円 約1.2万円 約2.5万円
20万円 9,850円 230円 18,300円 約2.8万円 約5.7万円
30万円 14,775円 345円 27,450円 約4.3万円 約8.5万円

出典:協会けんぽ 令和8年度保険料額表(東京)。本人負担の合計は、各項目の本人分を足した額です。端数処理の違いで1円ほどずれることがあります。

表のとおり、法人側は本人と同額を負担します。さらに事業主だけが払う子ども・子育て拠出金(率0.36%)があります(協会けんぽ 保険料額表)。標準報酬月額の最高は、健康保険が139万円(50等級)、厚生年金が65万円(32等級)です。

国民健康保険・国民年金と比べるときの見方

個人事業主 法人の役員
医療 国民健康保険(市区町村) 協会けんぽまたは健康保険組合
年金 国民年金(月1万7,920円・定額) 厚生年金(標準報酬月額×18.3%を折半)
保険料の基準 前年の所得など(市区町村の条例) 毎月の役員報酬(標準報酬月額)
誰が払うか 全額が本人 法人と本人で折半
上限 条例で定める限度額 標準報酬月額の最高等級

年金だけを見ると、標準報酬月額20万円の例で厚生年金の本人分は月1万8,300円、国民年金は月1万7,920円で、金額はほぼ並びます。ただし、厚生年金は将来の年金額が報酬に応じて決まり、保険料の半分を法人が負担する点が違います。保険料の額だけを並べても、同じ条件の比較にはなりません。

国民健康保険料は、住んでいる市区町村と前年の所得、世帯の人数で変わります。このため、「社会保険のほうが安い」「高い」とは一般には言えません。比べるには、国民健康保険は市区町村の窓口や試算ページで、社会保険は上の保険料額表で、それぞれ自分の条件で計算する必要があります。個別の試算は税理士・社会保険労務士にご相談ください。

家族構成も影響します。社会保険には被扶養者の制度があり、認定には年間収入などの基準があります(協会けんぽ)。当てはまるかどうかで世帯全体の負担が変わる場合があります。

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保険料の金額以外に、見ておきたいこと

社会保険料の差だけで判断すると、見落とすものがあります。

  • 法人側の費用:上のとおり、法人は本人と同額に加えて子ども・子育て拠出金を負担します。法人都民税の均等割は、東京都内に事務所がある法人なら赤字決算でも申告・納付が必要です(東京都主税局)。
  • 病気やケガで休んだとき:協会けんぽには傷病手当金があり、直近12か月の標準報酬月額の平均をもとに、通算1年6か月まで支給されます(協会けんぽ)。国民健康保険では傷病手当金は「行うことができる」給付とされ、実施は保険者である市区町村の判断です(厚生労働省 国保制度の概要)。法人の役員が受けられるかは、業務や報酬の実態によるため、協会けんぽや年金事務所に確認してください。
  • 将来の年金:厚生年金に入っていると、老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金を受け取れます。年金額は、加入していた間の報酬額と加入期間などで決まります(日本年金機構)。払う額だけでなく、受け取る額も変わります。

2026年の厚労省通知との関係

2026年3月と9月に、厚生労働省は、会費などを払って他社の名ばかり役員になる型について、被保険者資格の取扱いを明確にしました。この通知が見ているのは、役員としての業務の実態と、報酬が業務の対価になっているかどうかです。つまり、ここまでの仕組みは「実際に役員として働き、報酬を受けている」ことが前提です。通知の内容はマイクロ法人の社会保険は2026年の規制でどこまで対象になったのかで整理しています。

専門家に相談するときは、次の点を整理しておくと話が早くなります。

  • いまの国民健康保険料・国民年金保険料の年額
  • 法人から自分に払う予定の役員報酬と、役員として行う業務の内容
  • 家族構成(被扶養者にできる人がいるか)と、40歳以上かどうか
  • 法人を作った場合の法人側の費用(社会保険の事業主負担、均等割、顧問料など)

設立の流れから確認したい方は、マイクロ法人の作り方をご覧ください。

まとめ

個人事業主は所得連動の国民健康保険と定額の国民年金、法人の役員は役員報酬に連動する健康保険と厚生年金です。保険料の決まり方が違うことが、「社会保険料が変わる」と言われる理由です。ただし、法人側の負担・給付の違い・家族構成・通知で見られる実態があるため、一律に得とも損とも言えません。自分の条件での比較は、必ず専門家に確認してください。

免責・一次情報

本記事は一般的な情報提供であり、個別の社会保険・税務・法務に関する助言ではありません。特定の法人や個人にとっての保険料の多寡、役員報酬の設定、資格の有無は、社会保険労務士・税理士などの専門家と、保険者(協会けんぽ・健康保険組合・日本年金機構)にご確認ください。内容は2026年11月時点の情報で、一次情報を確認しています。料率は協会けんぽ東京支部のもので、都道府県や加入先によって異なります。